生産者からの廃業の知らせ

生産者からの廃業の知らせ
今年は年初から衝撃的でいろいろ
と考えさせられることが多くありました。
恒食という地味だけれど、昔からの
製品を大事に扱い続けている自然
食品の卸屋さんから連絡があり、
「タングロン」が製造中止になるとい
います。
タングロンは1969年から作られてい
る酵素入りの飲み物です。
昆布やリンゴが主原料で、自然な酸
味とすっきりした甘さでリピーターの
多い製品です。
見た目はちょっと古臭く、地味で、少
し怪しい雰囲気もあり、知らない人は
まず手をだしません。
ですからそうたくさん売れるわけでは
ないのですが、ファンはいて、毎週
欠かさずに注文していました。
それがことしの3月末で製造を終え
るというのです。
製造の機械が古くもう部品が無いた
めにメインテナンスができず、紙容器
メーカーの都合で容器も供給されな
くなるそうです。
新たに機械や容器の型起こしをする
資金はなく、やむなく製造の中止を
決めたということです。
確かに新たに市場を開拓して売り上
げを伸ばしていける商品ではありま
せん。
古くからあるいいものが消えていくの
はとても寂しいことなのですが、こち
らとしては長い間ご苦労様でしたと
いう言葉しかありません。
そんな少し沈んだ気持ちのところに、
今度はお米を作っている栃木矢板
の荒井さんから電話があり、今年ま
でで無農薬米の作付けを止めること
にしたと言われました。
理由は、除草のための機械がもう部
品がなくて使えなくなってしまったの
と、高齢化で除草に手間がかけられ
ないためということでした。
荒井さんと小川さんのお米はもう20
年近く扱っています。
倒産した仕入れセンターJACの生
産者の中で一番製品と人柄に信頼
のおける荒井さんを選んで直接のお
付き合いを始めました。
堆肥をたっぷりと使い、田に和紙を
しくことで草の生育を抑えての無農
薬での栽培で、甘さと香りの良さで
多くの人たちに支持されてきました。
そのお米がこの先食べられなくなる
のは本当に残念なことです。
けれど力のない私たち晴屋で、生産
者の生活を保障したり、高い価格で
の取り扱いはできません。
電話口で「長い間ありがとうございま
した」と言うしかありませんでした。
お米は昨年産のものが9月までは
在庫があるので取り扱いを続けられ
ます。
それ以降は何人かいる知り合いの
生産者の中から選ぶことになります。
時間をかけて、食べ物という命を託す
ため、美味しさと安全性と価格、そ
して何より信頼関係を考慮して決め
たいと思います。
それにしてもこうした廃業の問題は
晴屋にとっても他人ごとではありませ
ん。
不景気の波は等しく私たちにも及ん
でいます。
運賃や流通経費、資材費なども上が
っています。
体力の限界もありトラックの引き売りを
やめました。
みなさんのご理解もあり、私の予想よ
りは売り上げはおちませんでしたが、
やはり経済の縮小は厳しい現実です。
経費の節減のために店舗脇の駐車
場を2台から1台にすることにもしまし
た。
お金に縛られた価値観でなく、命が
つながることの意味を中心にした暮ら
しを続けたいと思いながらも、今の世
ではお金なしには続けることはでき
ません。
山梨の森の中に父が借りていた土地
を返さざるをえなくなり、建っている
家を今年中に壊すことになりました。
様々なことが押し寄せてくるのは、多
分私だけではないでしょう。
いままで潜んでいたものが一気に露
わになり、音を立てて崩れていくよう
な気がします。
こんな時だからこそ、静かな気持ち
でまわりを見つめていたいものです。

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