芽吹きの季節

芽吹きの季節
冷蔵で保存している根菜類も少し
づつ芽が動き始めます。
芽吹きは、温度や湿度などの条件
が揃えば始まる場合と、一定の時間
がたつと始まるものがあります。
地雷型と時限爆弾型という感じで
しょうか。
じゃが芋なども芽が動き始めてい
ます。
ご存じの通り、じゃが芋の芽は有毒
です。
中世のヨーロッパではその毒性の
ためにじゃが芋は人気がなく、花を
楽しんでいたそうです。
マリー・アントワネットが生のじゃが
芋の花のドレスを着たのが話題と
なっていたそうです。
ですからじゃが芋もヨーロッパでは
せいぜい200年位の歴史しかない
ようです。
その200年の間に品種や栽培方法
も随分と確立しました。
味のバリエーションも広がり、楽しみ
も増えました。
しかしその一方、芽が出ると見た目
が悪くなり、その後品質が劣化す
るので、芽をださない工夫がされま
す。
冷蔵もそのひとつですが、薬で発芽
させない、あるいは放射線照射で
発芽を止めるなどという技術が開発
されます。
発芽しなければ、ソラニンやカコニン
という毒素も作られません。
けれど発芽は自然な働きです。
じゃが芋は発芽して次の世代に命
を引き継ぐために生まれています。
私たちが食べるということは、その
命を分けてもらうということです。
発芽しないものを食べていては、ま
ともな命が維持できるとは思えませ
ん。
命に対する冒とくと感じます。
粗末な食べ物では、粗末な命しか
育ちません。
また、じゃが芋が一番美味しいのは
この芽が出る時です。
でん粉の質が最良となり甘く、ほくほ
くしてとにかく美味しいのです。
命が一番高まっている状態です。
この楽しみを犠牲にして、薬や放射
線で命を命ではなくしてしまうという
のはなんとももったいたないことです。
じゃが芋だけでなく、人参や玉葱も
市販のものは発芽しないものがほと
んどです。
味でなく、安全性にも問題がありま
す。
遺伝子組み換えのことを問題にする
以前の基本的に大きな問題ですが
当然同じ根でつながっています。
自然を人間の所有物として使い、
能率だけ、利益を多く得ることだけを
目的として、自然のことも、今生きる
人間のことも、未来のこどもたちのこ
とも考えていないのです。
芽が伸びれば確かに栄養は消耗し
ますし、味も落ちていきます。
それも自然なことです。
冷蔵庫等の涼しいところに置いたり、
芽を欠いておくとしばらくは大人しく
しています。
美味しいうちに積極的にメニューに
加えるのもいいでしょう。
ポテトサラダやポテトフライ、コロッケ、
肉じゃが、フライパンでソテーするだ
けでもいいし、ただ茹でて塩を付け
るだけでも美味しく楽しめます。
いろいろな工夫も楽しみのうちです。
生きることは食べることであり、自然
とともに生きることです。
自然と一体になる感覚をわすれがち
な私たち現代人ですが、せめても食
べるという根本のところではつながっ
ていたいものだと思います。
芽が出るのが安心と悦びである文化
が育ってほしいものです。

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