俳句 令和5年10月23日~10月29日

夏衣ひとり遊びは憑依して

誰かの忌冷やし中華に紅生姜

香水は黙約孕み不眠症

  
               晴


俳句四季十一月号
 秋尾敏先生特選句 

夏衣ひとり遊びは憑依して
        松橋晴

子どもが何かになりきって遊ん
いる。それを「憑依」と言った
のだろう。しかし、考えてみれ
ば大人の「ひとり遊び」も何か
に取り憑いている状態であろう。
いや、取り憑かれているという
べきか。俳句にしろスマホのゲ
ームにしろ、自分とはいったい
何だろうと考えてしまうことが
ある。夏の衣服は白が多い。白
は特別な色で、呪術師や祈祷師
も着る。季語と事象が遠い連想
で結ばれていて深い。	
        
    秋尾敏先生の評価文






俳句の「詠み」と「読み」
俳句は五七五という音数、季語を入
れるという形式が決まっていますが、
それ以外は何を「詠」んでも自由で
す。
一方それを「読」む側も、どう解釈し
ても自由で、作者の手を離れ読者の
手に渡った時から作者の物ではなく
なります。
今回俳句「四季」十一月号で、初め
て特選に選ばれましたが、秋尾敏先
生の「読み」が作者の意図を上回り
良い句は読者によって作られるとい
う良い例となりました。
夏衣(なつごろも)で私としては白の
イメージを持ち、少年の爽やかさを
想起していましたが、呪術師や祈祷
師までのイメージは持てませんでし
た。
俳句やオーディオなど、ひとり遊び
が好きな私ですが、私に限らず人間
は社会的な生き物であると同時に
この世界に一人生きる者です。
ただ遊びに生きる姿こそ人間の人間
たる由縁と思います。
その生きる深みを、本人の意図以上
に汲んでいただき、句に深みを与え
ていただきました。
とてもありがたいことと感謝していま
す。
ありがとうございました。

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