3月31日の山下邦彦レクチャー・コンサート延期のお知らせと山下氏からのご挨拶

昨年12月の山下氏の演奏付きのレクチャーの面白さに惹かれて、コンサートを依頼しました。

残念ながらそちらの企画は中止となりましたが、レクチャー・コンサートへと再始動しました。

ヒバエッセンスの加湿器での噴霧や、アルコールでの除染をしてウイルスへの対処も考えました。

けれど残念ながら世の情勢は厳しく、延期の決定をしなければなりません。

度重なる変更で楽しみにされている方々には大変に申し訳なく思っています。

つきましては表現者である山下氏からのメッセージをいただきました。

今後の方向性を明示しているものと思いますのでお伝えします。

私たちの要望にも応える内容となっていると感じます。

ご照覧ください。           晴屋 松橋

 

 

2008年に出版した『坂本龍一の音楽』(東京書籍)は、移動ドによる階名唱にもとづくものでした。あの頃の僕は、この階名唱が、多くの人にとって、とても身近なものだと、錯覚していました。
ここ数年、ほとんどのメディア、教育機関が、絶対音感=固定ド神話に染め上げられているという現実を知るにいたりました。楽譜とピアノの関係についても、認識がずいぶん変わりました。
あきらかに、現在、ほとんどのピアノは「歌=階名唱」を忘れてしまったのです。もちろん、それを弾く人間たちによって/とって。

2019年12月3日、友人の寺坂英人さんに誘われて、今回の企画の主催者である松橋和也さんたちの会(音環)に参加し、ささやかなレクチャー・コンサートを行うことができました。
この10年間、熱心にピアノに触ることもなかったのですが、ひたすら、頭の中で音楽について考えてきたことを、懸命に音にしようとしたところ、それが「何か」であることを、その場にいた方たちのリアクションから、感じることができたのです。僕にとって、それは、おおげさではなく、奇蹟的なハプニングでした。ワオッ! ワクワクが止まらないオジサンに、僕は変身しました。

ただ今回、世の中の情勢に鑑みて、3月31日の予定されていたレクチャー・コンサートを延期することを松橋さんに提案し、主催者としての苦渋の決断をしていただきました。皆さんの中に少しでも不安を感じる方がいらっしゃるならば、無理に開催するのは、ちょっと違うんじゃないか、そう僕は考えたからです。

改めて、皆さんにお会いできる日を僕は熱望しています。心から楽しみにしています。それまでの間、僕は僕なりに、今、考えていることを更に深める作業を続けていきます。皆さんの期待により応えるため、皆さんの素敵なリアクションをその場で感じる日を夢見ながら。

皆さん、くれぐれもご自愛ください。
山下邦彦

*以下は、3月31日に予定されていたレクチャー・コンサートのために練っていたレジュメです。「延期のせめてものお詫び」という意味合いもありますが、何よりも将来、お会いできることを夢見る皆さんと、今、共有したいと僕は強く思いました。本当に粗削りですが公開します。次回、お会いする際にはバージョン・アップしたものをお届けしますが、取り急ぎ、挙げられている曲を聴いてみて、しばしご自身の想像の翼を広げていただければ、幸いです。

 

 

【シリーズ・タイトル】
ANALYSE アナリーゼ

【シリーズ・テーマ】
「歌を忘れた」ピアノは「Do-Re-Mi」の夢を見るか?

「数=ⅠⅡⅢ」でも「アルファベット=ABC」でも、「音名としてのドレミ」でもなく、徹底的に「Do-Re-Mi」に従って歌うこと、「Do-Re-Mi」の「フォーク」と「ブルース」への欲望や、その先にある夢に忠実であること。

●MUSIC LIST “A” /「歌を忘れた」ピアノで歌う
キース・ジャレット/「KOLN, January 24, 1975 Part Ⅱa」(『The Koln Concert』より)
マーラー/「アダージェット ヘ長調」(『交響曲第5番』第4楽章)
坂本龍一/「Open The Door」(『The Last Emperor』より)

●MUSIC LIST “B” /ポップ・アナリーゼの呼びかけにこたえて
マイルス・デイヴィス・クインテット/「ネフェルティティ」(作曲:ウェイン・ショーター)
エリック・ドルフィー/「ミス・アン」(『ラスト・デイト』より)
ドナルド・フェイゲン/「ナイトフライ」(冨田恵一の分析について)

【レクチャー・テーマ】
2020年 アナリーゼの旅
坂本龍一 ✕ バッハ(X軸)ドビュッシー(Y軸)ビートルズ(Z軸)をめぐって

●MUSIC LIST “1” /坂本龍一のX(バッハ)Y(ドビュッシー)Z(ビートルズ)をめぐる7曲
バッハ/①「ロ短調プレリュード24」(『平均律クラヴィア曲集』第1巻より) ②「ホ長調フーガ9」(『平均律クラヴィア曲集』第2巻より)
ドビュッシー/③「月の光」(『ベルガマスク組曲』より) ④「小さな羊飼い」(『子供の領分』より)
ビートルズ/⑤Norwegian Woods(The Bird Has Flown) ⑥Strawberry Fields Forever ⑦Lucy In The Sky With Diamonds

 

 

 

【山下邦彦 プロフィール】

1957年大阪生まれ。関西で数年間のバンド・マン(ピアノ)活動を経て、音楽雑誌編集者、のちにフリーランス。

おもな編・著書
『カシオペアの本』(立東社、1988年)
『キース・ジャレット 音楽のすべてを語る』(立東社、1989年)
『坂本龍一・全仕事』(太田出版、1991年)
『坂本龍一・音楽史』(太田出版、1993年)
『ビートルズのつくり方』(太田出版、1994年)
『チック・コリアの音楽―ポスト・ビバップの真実と新しいジャズの可能性を求めて』(音楽之友社、1995年)
『Mr. Children Everything―天才・桜井和寿 終りなき音の冒険』(太田出版、1996年)
『楕円とガイコツ―「小室哲也の美意識」×「坂本龍一の無意識」』(太田出版、2000年)
『武満徹 音の河のゆくえ』(共著、平凡社、2000年)
『キース・ジャレット インナービューズ―その内なる音楽世界を語る』(太田出版、2001年)
『甦れ、ユーミン!―「シャングリラ」の悲劇とポップスの死』(太田出版、2003年)
『JOE ZAWINUL on the creative process ウェザー・リポートの真実』(リットーミュージック、2006年)
『坂本龍一の音楽』(東京書籍、2008年)など。

そのほか、楽譜集『キース・ジャレット《ザ・ケルン・コンサート》』(日本ショット、1990年)『坂本龍一/04 オフィシャル・スコアブック』(リットーミュージック、2005年)『坂本龍一/05 オフィシャル・スコアブック』(リットーミュージック、2005年)の制作にも携わる。

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