五人娘と香取 芳醇な日本酒のおすすめ

  • 2019/4/26

芳醇な日本酒のおすすめ
日本酒の楽しみ
清酒という言葉があります。
どぶろくなどの濁り酒よりは、上等なお酒という意味なのでしょう。
日本酒は雑味を無くすため、米を磨いて中心部分を使い、
活性炭で色や風味を抜くのが普通のことになっています。
そして、コストを下げるために粗悪な材料を使い、
合成酒の添加までするようになりました。
そんな現状が、日本酒は臭くて、甘くて美味しくないという
イメージを作ってきました。
けれど、まともな材料を、丁寧に、高い技術で扱えば、
米を磨いて精白度を競ったり、活性炭に頼って風味を整える
必要がありません。
お米が元来持っている栄養やミネラルを生かしてこそ、
日本酒の本当の美味しさがあります。
五人娘を作っている寺田本家では、原料の米の一部を自家栽培
し、無農薬の米で原料のほとんどをまかない、活性炭で風味を
整えるのをやめてしまいました。
原料と出来上がった製品に対する自信が、
よほど無いとできることではありません。
精白も最小限にし、五人娘が70%、香取80が80%、香取90が
90%になっています。
精白度を落とせば、次第に味は糠の匂いが増えてきます。
晴屋では扱っていない寺田本家の玄米のお酒は、
日本酒にぬか床を混ぜた感じで、正直楽しめません。
香取90では、ぬかの香りはありますが、フルーティナーな香りの
支えがあるために、深い味わいとして楽しめる物になっています。
お燗にしたときの切れ味は、すごいものがあります。
香取80は、晴屋では一番売れています。
すっきりした呑み口と、呑み応えがバランスして、冷でも、常温
でも、お燗でも楽しめます。
適度の酸味とお米の持つ旨みがなんともいい感じで、
一口目も美味しいのに、ずっと飲んでも飽きない味です。
五人娘も、無濾過になって風味が増しました。
少し琥珀色になり、以前の穏かでやさしい味わいから、
野性的で、作った人の主張よりは材料の持つ素材の力を
感じさせるものに、変ってきました。
人として生きる主張より、自然の豊かさに席を譲り、
優先した、一歩自分を引いた姿勢です。
これはプライドや自己主張でなく、誇りが優先した、
日本人が本来持っていた謙虚な姿勢です。
日本の伝統を外れた所で日本酒作りをしているようでありながら、
寺田本家は時代に流されない本当の日本酒を目指しています。
豊かな味と栄養とミネラルをお楽しみ下さい。
豊富なミネラルがあると、不思議と悪酔いしません。
日本酒独特の翌日の体と気持ちの重さは、
ミネラルのバランスの悪さから来ているようです。

五人娘と香取
ワインの本場・フランスでは一番美味しいお酒はワインでしょうが、一番ま
ずい酒もワインだろうと思います。
日本でも本当に美味しい日本酒はずっとあったのだろうと思いますが、
私が若かった頃は、剣菱や樽平が上等位で、日本酒は甘くべたべた
してくどい酒というイメージを持っていました。
地酒ブームがやってきて、個性的でまともなお酒が手に入るようになって
も、なかなかずっと飲み続けられる物はありませんでした。
嗜好品ということもあり、同じ物では飽きてしまうのです。
それには熟成感や旨みの問題があります。
日本酒は通常、冬に仕込んで秋から飲みはじめます。
熟成期間は半年ということになります。
それではやはり数年熟成するワインにはかないません。
また、ワインはそのまま丸ごとを仕込みますが、お酒では周囲の栄養
豊富な部分が酒にとっては味の邪魔になるからと、上等なお酒ほど
周囲の部分を削って取って使います。
精米歩合と書いてあるのがその割合です。
磨きといわれるその作業をすればするほど上等という認識がいつか
生まれてきています。
そして「上善水の如し」などという言葉の通り、すっきりさっぱりした
のがいいという風潮になってきています。
特に新潟方面から来る越後杜氏といわれる杜氏さんたちにその傾向
が強いようです。
米所だからかえって米の風味が無いのが上等と思っているのかもしれ
ません。
それでも、酒蔵の中には熟成した日本酒本来の美味しさを追求して
いる所もあります。
石川県の菊姫、天狗の舞、岐阜の義侠、秋田の比良泉などが代表で
す。
淡麗辛口の一般の風潮とは対極のこの酒たちは、手間と時間がかかる
山廃仕込で仕込まれています。
自然の乳酸が入り込むのを待つこの仕込み方は、単純で画一的でな
い、複雑で奥の深い味わいになります。
五人娘はそうした芳醇さを求める酒の中でもかなり個性的です。
そして、杜氏が変わって、その個性がますます強くなってきています。
少し前までは、米の香りが豊かだけれど、どちらかというと穏やかな味
でした。
飲んでほっと安心して静かにやさしく心が落ち着く感じ。
それが今は少し荒々しく、野生の力を感じるものに変わってきています。
しかし浮ついてとってつけたようなわざとらしさはありません。
しっかり熟成しているからです。
日本酒の伝統を守りながら、ワインの感覚を取り入れ、そのどちらも超
えた物を目指しているようです。
米を磨くのを避けて、なるべく全体を生かそうというのもそこから来てい
るのでしょう。
ワインは熟成させるために、酸化防止剤に頼らざる得ないという欠点も
あります。
ついには普通はあり得ない、玄米での酒造りまでしてしまいました。
これははっきり言って、本人たちも認めている通り、美味しくありません。
酒にぬかみそを入れて飲んでいる感じです。
それでも、健康にはとてもいいらしく体のことを気にする人には愛好され
手に入りにくい商品になっています。
体に必要な物は美味しく感じるというコンセプトでやっている晴屋として
は、そこまで行くとちょっといきすぎと思います。
しかし、その直前の90%まで残した物は個性的で楽しめる物としてお
すすめできます。
芳醇な日本酒には、日本の風土や食べ物にみあった味わいがあります。
野菜や漬物にも合い、酒と肴といわれるくらい魚にもぴったりです。
酒の旨みが魚の旨みを溶かしだし増幅して、体に沁みていきます。
古漬けの漬物の酸味は、味をきりっと引き締め、酒の旨みを引き立てま
す。
これしかないと思えるような相性の良さは他では考えられません。
こうした芳醇なお酒は、量を飲むのには向いていませんが、少量を味わ
い感覚を深めるのにぴったりです。
今までの日本酒にあまりいいイメージを持っていない人にもぜひおすす
めしたい深い感覚美の世界があります。
ぜひお試し下さい。
それぞれのお酒についての個人的な感想を書いて見ますので、興
味のある方は参考にして下さい。
もちろん、季節や体調、一緒に食べるもので変わってくるので、絶対
ではないので、一応の傾向として受け取って下さい。

五人娘 
冷○ 常温◎ ぬる燗◎ 熱燗○
辛口で風味が豊か。味が以前に比べて濃厚になり、少しあったぬか臭
さがなくなりました。純米酒の味わいと吟醸酒のフルーティーな香りを
両立し、酸味もあって、飲み応えがあります。量を飲むのには適しませ
んが、少量をじっくり味わうのに最適です。しっかり熟成しているので、開
封後も味が落ちにくいのもうれしい処です。ベストは3日から一ヶ月位
でしょうか。温度による味の変化も比較的少なく、一口目の芳醇な味
が最後まで持続します。飽きの来ない、この蔵を代表する酒です。

香取純米80 
冷◎ 常温◎ ぬる燗◎ 熱燗◎
以前、濾過していたものが無濾過に変りました。少しあったアルコール臭
が全く無くなり、純米90に近くなりましたが、華やかな香りがあり、とても
満足感があります。切れがあり、深みがあり、しかも不思議と後に残りませ
ん。濾過で失われる香りやミネラルなどの微量成分の大事さを実感で
きますが、無農薬米を使った原料や原酒の素性の良さがあればこそ
できた飽きない本物の味です。

香取純米90
冷○ 常温○ ぬる燗× 熱燗◎
このお酒も無濾過といって、活性炭で風味を抑える工程を経てい
ません。そのため色も茶色見がかり、米の香りも濃厚になっています。ほ
んの少しぬかの香りもします。それでも美味しく感じるのは、熟成したフ
ルーティーな香りの支えがあるためで、はじめ米の旨みと香りを感じ、
喉越しは切れ味があり、すっと引いていく感じが後を引く美味しさです。
そしてこの安さは驚異的です。
特に熱燗での力強い切味と深みある味は他の追従を許しません。
冷もいいのですが、常温に氷を一個だけ入れて溶かして香りをたてなが
ら楽しむと、隠れた旨みが引き出され満足感が増します。
飽きの来ない味で、晴屋で一番売れる酒となっています。
価格の安さもあり、料理酒としても素晴らしいものです。

玄米酒「むすひ」
冷◎ 常温○ ぬる燗? 熱燗?
健康にいいからと飲まれているお酒ですが、技術の向上で以前よりずっ
とおいしく楽しめるものになりました。
季節により味が変わり、お酒が自然の賜物だと実感ができます。開封は
ゆっくりやさしくしてください。

醍醐のしずく
冷◎ 常温◎ ぬる燗○ 熱燗◎
中世に菩提山正暦寺で創製された日本酒の原点となる菩提もと仕込み
で作られました。豊かな酸味と深い旨み、自然な甘さはまるで上等なワ
インのようです。季節によって味が変わる生きたお酒です。
八丁味噌など熟成度が高く旨みが豊富な食べ物に相性もよく、でしゃ
ばらず負けずに今までにない深い世界をみせてくれます。
旨み成分のアミノ酸が多いため魚とは必ずしも相性がよくありません。
しかしそのアミノ酸が疲れた身体にはとても有効で、すこし飲むととても
元気が出ます。
酔うためより、滋味を味わい、からだをいたわる酒です。

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