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ひらがなでよめばわかる日本語
中西進
手に入らなくなっていた名著が再版
されたようで、みなさんにお伝えした
く取り上げることにしました。
中西進さんは日本語、古代文化の研
究・出版で大きな足跡を残している
方です。
ご本人は否定していますが、令和の
命名者だろうとも言われています。
けれど堅苦しい方ではなく、むしろ
飄々として流れるように広い知見と
内なるのびやかな感性を伝えます。
この本も読んだ時には感動し、これ
を読まなければ日本人とはいえない
とまで思ったほどでした。
「目・鼻・歯」も「芽・花・葉」も、「め・
はな・は」
文字を「書く」も頭を「掻く」も、「かく」
「太陽」も「焚火」も、「ひ」
漢字をとりはらうと本来の日本にあっ
た世界がみえてきます
「は」は、葉でもあり、歯でもあり、端
でもあります
同じ立場や役割を持つものを一つ
の単語で呼び、形態が違っていても
区別しないという考え方なのです
「やまとことば」で、日本人の知のダ
イナミズムが見えてきます
「ち」は、血、力、雷(いかづち)、乳
=不思議な力あるもの、霊格
「は」は、春、晴る、張る、祓う、原
=空が晴れ、心が高揚し、活動する
「あ」は、秋、明らか、開く =充分に
いっぱいになる、行き過ぎると飽きる
「い」は、生く、忌む、息、命、斎く
=生きる、祈る、忌み尊ぶべき霊格
漢語や片かな等の外来語を吸収す
ることで世界を広げてきた私たち日
本人ですが、一度それを洗いなおす
ことで、私たちが本来持っている感覚
を呼び起こすことができます。
言霊の力で太古の世界への深い共
感に驚くことがあります。
日本人の自然と一体となった感覚の
原点へと立ち返る瞬間です。
私も俳句を始めて、もう一度日本語と
向きあわねばと古本を手に入れて
読んだ本でした。
実は私は中西進先生に教わってい
たことがあります。
予備校時代一年間、古文の授業を
受けていました。
淡々と語りながらも、内なる熱気を
発していました。
その先生が、NHKのテレビ番組で
万葉集のことを解説しているのを見
てこんなに偉い先生だったのだと知
って大変に驚きました。
そして大学に入ったら少し古文の
勉強でもしようかなと思ったもので
した。
しかしすっかりと志を忘れてしまい
勉強をせずに大学生活をおくって
しまいました。
そのつけを、俳句を始めた今払って
いるようです。
六十代後半となっては、固く、鈍くな
った頭で知を入れ替えることはでき
ませんが、時折言葉の中に感じる
説明できない共感を意識することで
少しは近づくことができるかもしれま
せん。
失われつつある日本の感性を呼び
もどし、伝えるためにもみなさんに
おすすめしたい本です。
新潮文庫 572円