句集「檸檬のかたち」  三輪初子

句集「檸檬のかたち」  三輪初子

私が所属する俳句結社「炎環」の
先輩である三輪初子さんが、第4
句集「檸檬のかたち」を上梓され
ました。
2007年に、43年間阿佐ヶ谷でご
主人と続けてきた居酒屋レストラ
ンの閉店を余儀なくされ、その時
以降の句が収められています。

余花の雨使はぬ食器磨きをり

渋滞の師走の車よりイマジン

受話器置くあとの沈黙ヒヤシンス

建国の日折鶴の嘴とがりをり

中七に独特の密度がある句が多く
あります。けれど情緒に流れぬ知的
な配合で人間探求派の末裔である
個の存在が際立ちます。表題句。

切る前の檸檬のかたち愛しめり

レモン置く父の遺愛の辞書の前

スライスの檸檬さはさは鬱ぬけし

脱ぎ捨つる生臭き皮竹の秋

半夏生物言ふ口と言はぬ口

また食事の提供を生業とし、人の心
と身体にやさしく触れるような柔らか
な感性も感じられます。

包丁のやさしくなりし春キャベツ

ゆうるりとにぎるおにぎり余花の花

青バナナだれも触れずに熟しけり

鰻食ふいまが晩年かもしれぬ

雑煮餅母のヒミツは母のもの

映画や演劇の造詣の深さを感じる
句も多くあります。知が屹立し、人間
社会と自己への厳しい視線とゆるが
ぬ姿勢が伝わります。

月涼し森を動かす沙翁劇

戦争の終はらぬ星の星まつり

水旨き国に生まれて墓洗ふ

生き方とみかんの剥き方変へられず

八月の、暑さや台風の厳しい天候
の中、心地よい緊張を感じる時間を
過ごさせていただきました。
ありがとうございました。 晴

仮名遣いに間違いがあり、訂正させて
いただきました。
申しわけありませんでした。
作者の方には折角の作品を誤った表示
にしてしまい、嫌な思いをさせてしま
いました。
大変に申し訳なく思っています。
只今新かなに挑戦中で無意識のうちに
そちらへ意識が向いてしまっていたの
かもしれません。
しかし初心者の失敗ですむ話ではなく、
改めて姿勢を問われ、正さざるをえな
いことです。
作者の意図と違う表現、表記をしては
ならないことは俳句の絶対条件です。
ご指摘ありがとうございました。
改めて勉強させていただきます。

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