ポイントカードから会員制へ  ドイツのBIOと晴屋の40年

ポイントカードから会員制へ
ドイツのBIOと晴屋の40年

この度、この忙しい年末の時期に
長年続き定着している晴屋のポイン
トカードを終了し、新たに会員制度
を始めることにしました。
まったく唐突な、一方的な変更で
戸惑われている方も多くいらっしゃ
ると思います。
ただでさえ忙しく、また世の中の先
のことも見えない状況で何を血迷っ
ているのかという批判ももっともなこ
とだと理解しています。
しかしこんな時だからこそ、晴屋の
ポリシーを保ちながら存続するには
必要なことだと判断しました。
実は会員制への移行はもう数年前
から考えていました。
ドイツのドレスデンやベルリンに行
き、多くの自然食品店を見て歩いた
時、晴屋や日本の自然食品店との
多くの違いに驚き、また触発もされ
ました。
まず店の数の多さ、そして生活の中
への定着の密度の濃さです。
スーパーマーケットの棚には必ず
自然食品が並んでいます。
それだけでも最低限の食生活が賄
える食品が揃うでしょう。
そして地元密着型の自然食品のチ
ェーン店がベルリンだけで4種類あ
り、それらが市内で多店舗展開され
ています。
ごく近くの見える範囲に他のチェーン
店がある場合もあります。
その他に晴屋と同じように40年間こ
の仕事を続けている小規模の店舗
も多くあり、それぞれに長く関係を
続けている顧客がいて繁盛してい
ます。
都会的に洗練された「ビオ・カンパ
ニー」、質実剛健な「LPGビオマルク
ト」などのチェーン店は、ベルリン近
郊50km以内の農産物を中心にす
るなどの独自の基準を明確にして、
消費者の支持を得ています。
また晴屋と同規模の昔からの店で
は、個人とのつながりや大規模店で
は扱えない小規模の心のこもった
生産物を扱って顧客がついています。
明確な基準を守り、それを支持する
人たちがいるというのはいかにもドイ
ツ的です。
そしてどちらも会員制度をしいてい
て、非会員との価格差を付けること
で、より生活に密着した仕事として
成り立っています。
これだけ多くの選択肢がありながら
みなが同時に続けていられることに
とても大きな驚きを感じました。
しかし一方、プロの私から見て、品
揃えはそれほどいいわけではありま
せんでした。
知っている製品も多くあり、晴屋で
扱っているものも見かけました。
晴屋では却下された品物もけっこう
ありました。
品揃えの多さは素晴らしいものです
が、平均レベルはそう高くは感じま
せんでした。
また個性を競うはずなのに店舗同志
での品揃えも大きな差はありません。
品揃えや品質や味よりも、店の姿勢
を支持するというのがドイツ流なのだ
と解釈しました。
日本を顧みて、ドイツや特にベルリン
ほどには自然食品は定着していませ
ん。
また理念で品物を選ぶ人の割合も
少ないと思います。
どちらかと言うと理念よりは数字や言
葉に表現される安全性を気にしてい
る人が多くいます。
晴屋はその中でかなり個性的です。
まず美味しさを重視します。
美味しさは身体が必要だと訴え、求
める感覚です。
私たちの精妙で、深い感覚と本能が
必要な物とそうでないものを瞬時に
選別します。
だから、美味しい物も食べすぎれば
不味く感じます。
もう必要ないからです。
この感覚がなければいくら安全とい
われているものを食べても何の意味
もありません。
また美味しさを求めていれば、自然
と添加物や農薬などに頼らない暮ら
しにいたります。
安全性を求めればそうでないものを
避け、優劣が生まれ、差別も生じま
す。
美味しさはその他人だけの感覚で
他者や物を差別しません。
個性を持っている私たちは、美味し
さをまず探求すべきだというのが
晴屋のポリシーです。
しかしこれは、今の世ではなかなか
伝えるのが難しいことです。
質の悪い素材を濃い味付けでごまか
した食べ物になれている世代に、何
かを伝えようと思っても手段が見つか
りません。
しかし次の世代へと感覚を伝え、作り
手の継承をするためには私たち自身
が存続しなければなりません。
これからは日本に限らず、世界中が
ますます厳しい状況となっていくこと
でしょう。
何かをすればそれで安泰などという
方法はありません。
分かりやすい数字や言葉上の安全
性や、価格だけの優劣では晴屋は
アピールするものはありません。
あるのは命に対する信頼、それを根
にする美味しさの探求、それを次の
世代へつなげる希望だけです。
今回の会員制度の導入で、晴屋の
品物により近づき、生活に取り入れて
いただく方が増えることを期待して
います。
ドイツのような明確な基準を持つこと
はできませんが、その知に足をとられ
ないことが晴屋の良い所でもあると
思っています。
今回ポイント制から会員割引に移行
するにあたり、消費者の方々は2%か
ら3%へ割引率が増えることになります。
1000円の年会費はありますが、多く
の人にメリットはあるだろうと思います。
これまで配達ではポイントは付きませ
んでしたが、今回から割引の対象に
なります。
ペイペイでは付かなかったポイントも
割引の対象となります。
その場で割り引かれることで、分かり
やすく風通しが良くなることもあると
思います。
しかし正直言って、これでこれからの
危機が全て乗り切れるというものでは
ありません。
そのためのよりよい道への選択の一
歩と感じています。
これは知的なシュミレーションというよ
りは、最期は身体の反応です。
美味しいものを選ぶのと同じ感覚で
こちらの方がいいと言う私の身体の
主張を信じて決断しました。
多くの方を戸惑わせ、ご心配をおか
けし、申し訳ありませんが、晴屋だけ
でなく皆様にも役立つことと信じて
会員制度を開始させていただきます。
よろしくお願いします。

関連記事

ページ上部へ戻る