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- 泉義勝句集「つぶやきの」

私が所属する炎環・明日香句会の
先輩泉義勝さんが句集を上梓 され
ました。
泉さんは北海道岩見沢出身で1940
年の生れ、句歴は十数年です。
達筆で博識、紳士で人望もあります。
誠実で嫌味がなく多くを語りません
が、時に内に秘めた感情がほとばし
ります。
雨ごとに風のふくらむ春隣
万緑や人間のこと思ひたる
社会に対しての関心も高く抑えた感
情が垣間見えます。
私には内に屈折を秘めながらも誇り
高く寡黙な野武士の風格が感じられ
ます。
つぶやきのことばならざるさるすべり
つぶやきのつぶやきとなる秋の声
句集のタイトルともなっている「つぶや
き」は、そんな泉さんの秘められた世
界の発露です。
つゆ寒の臍に触るるや聴診器
唐辛子書き直したる遺言状
ご高齢のため病気もかかえています
が、句会や吟行には積極的に参加
されています。
病気のことも感情を交えず透徹した
まなざしで句にしたためます。
小岩井やどつかと秋の岩手山
鬼柚子やけふも大きな妻のこえ
「小岩井や」の句は宮沢賢治の足跡
を追っての岩手吟行の旅に詠まれた
ものです。
岩手出身の私には動かしがたい岩
手山の威容が身近に感じられます。
「鬼柚子や」の句は愛妻家の泉さん
の奥様への愛情と信頼が感じられ
ます。
けふもまた句座のどん尻へぼ南瓜
「けふもまた」の句は明日香句会に
出品された時、私だけがとりました。
諧謔性が発揮されたともとれますが、
私には自虐、達観というよりは「良い
句をだしているのにどうしてとられな
いのだろう」という内なる俳句への強
い思いが感じられ、泉さんの内なる熱
さが伝わる句として好感がもてました。
櫟の実歳相応の貌となり
櫟くぬぎの実はどんぐりです。
どれも同じようでも味わいのあるどん
ぐりの実。
くぬぎはまた「国の木」であり、古来
より薪や救荒食として国を支えました。
若い時は相当に二枚目だったかも
しれない泉さん。
歳を経て年齢相応のいぶし銀の顔
だちにも磨きがかかります。
句会には2センチほどの短かくなった
鉛筆を持参され丁寧に字を書かれ
投句されます。
達筆すぎて読みにくいのが欠点なの
ですが。
泉さんのチビた鉛筆花菜雨 晴
今後のますますのご活躍を願って
います。 文責 晴
(百年書房 1800円+税)