晴屋と加工品の作り手たち
45年前晴屋創業の当時、有機農業や無農薬栽培への世の中の理解は今ほ
どにはありませんでした。
最初有機栽培の農産物の仕入れセンターに加わりましたが、自然環境が
比較的豊かな地方でも安全性や美味しさを求める姿勢はあまり顧みられず、
むしろ東京やテレビの価値基準が幅をきかせていました。
地域や日本全体がよりよい方向へ向かうにはまず東京が変わらなくてはなら
ないだろうと感じ、それを実現するために晴屋をはじめました。
採算を考えて始めたわけではなく、とにかく何かをやらなければならないとい
う若い使命感だけで走り出した、まだバブル前の1980年のことです。
以来少しづつ規模を拡大し、お客さんも増えて現在に至っています。
そのため創業当時から生産者と直接のつながりがあり、畑で生産者との直接
の会話で得たもの、生産の現場での知見が晴屋を形作りました。
まず自然や作り手を優先する価値観や志向が根底にあります。
野菜以外にもムソー、創健社、オーサワジャパン、杉食、恒食などの大手の
自然食品の卸元とも付き合い、その中でベストの物を選んでいます。
また宅急便を使って直接取引している生産者もいつの間にか数十件になり、
他の店にはない晴屋の個性となっています。
群馬の金井さんや栃木の荒井さんの米、庄内共同ファームのもちや玄米お
こし、山形の三吉の味噌や醤油、五日市の近藤醸造の醤油、寺田本家のお
酒、新潟なかよしミートの豚肉、山口の秋川牧園の鶏肉、町田ドイツ屋のハム
ソーセージ、四国の久保田食品のアイスクリーム、岩手府金製粉の小麦粉、
神奈川の佐藤仁さんと屋久島八萬寿茶園のお茶、大阪山田のせんべい、
斎藤さんの国産生蜂蜜、自然色はら山の和菓子などどれも欠くことのできな
い、他の店では手に入れにくい、個性を持ったすぐれた製品たちです。
作り手や美味しい物にであった時の悦びや閃きに導かれ、いつの間にか多く
の生産者と直接取引することになりました。
生産者ごとに豊かな個性があり、発送の都合やロットがあり、送料がかかり、
支払いの決まりがあります。
手間はとてもかかるのですが、心ゆく品物を扱う悦びにはかえられません。
また長年仕事を続けていて、ある程度の規模があるため多くの品物の取り扱
いを依頼されますが、試食して扱うものは100個に1個あるかないかです。
価格や品質のバランス、生産者の心意気に納得できるものはごく僅かです。
セレクトショップ的に、選び抜かれた品物を店頭に並べ、おすすめするとい
うのが晴屋のやりかたです。
世の風潮とはあっていませんが、品物を送ってくれる生産者の信頼に答える
ためにも、消費者のみなさんに自信を持って手渡せる品物を扱い続けるため
にも、この姿勢は続けたいと思っています。

地産地消と世界
地産地消は合理的で、すぐれた発想です。
自分が暮らす場所の近くで作られたものを食べ、消費することはエネルギー
の効率も良く、生産者の顔も見え、なによりも信頼を感じます。
けれど世界には頑張って物づくりをしている人たちも多くいて、その人たちと
もつながっていきたいとも思います。
創意をもって懸命にがんばることを互いに認められる世界に近づきたいと思
います。
この一見矛盾したふたつの方向性ですが、正直言ってどちかに決めることは
できません。
今晴屋では東久留米の地元の高橋さんの椎茸や、奈良山園の野菜も多く
仕入れていますし、プチフールの天然酵母パンもあります。
比較的近い川越には野菜を取りにいって主要な仕入れ先になっています
一方、ろばやが世界とつながって仕入れる珈琲や紅茶、世界の生産者と直
接やりとりしているネオファームのナッツ・ドライフルーツ、志立のオリーブ油、
竹内さんのバリの塩、保坂さんのハンガリー産有機アカシア蜂蜜、パプアニ
ューギニアの天然海老など、信頼する人たちが扱う、信頼できる品物は積極
的におすすめしていますし、晴屋にとってなくてはならないものたちです。
知識で判断するのではなく、身体が悦ぶ美味しさがあるか、出会いに閃きが
あるかどうかを基準にしています。
晴屋にあるのは45年間のそうした営みの結果残ったものたちです。

関連記事

ページ上部へ戻る