秋の養生
冬に向かい舵を切り、動き始めて
いる私たちの身体。
夏の間の代謝を多くして雑菌に対
抗する活発な状態から、代謝を落
として少ないエネルギーで寒さに
耐えるギュッと締まった状態に脱皮
していきます。
皮膚は引き締まり、骨盤や肩甲骨、
後頭骨なども締まって、まき散らし
鬱散するより、集中する方向に身
体も感受性も変わっていきます。
しかし一気に変ることはできなくて、
左右交互に変動が起きたり、夏の
間に疲れた腎臓や肝臓に休息を
与えたりしながら、徐々に変わって
いきます。
自然に即した生活をしている人た
ちは、こうした季節の変わり目に風
邪をひき、汗をかいたり、熱を出す
ことでこの時期を乗り越します。
こうした風邪の積極的生かし方の
急所は、熱がある間はなるべく普通
に過ごし、その後の平熱以下の時
期を静かに休むことです。
私などは忙しくて風邪をひくひまも
ありませんが、決して自慢できるこ
とではありません。
秋のしんどい時期を乗り切るポイン
トの一つは、肝臓を休めることです。
良質のたんぱく質を中心に、美味
しい季節の幸を少しづついろいろ
楽しみ、食べる量は減らすことが
必要です。
もう一つが腎臓を休めることを含め
た渇きへの対処、水のとり方です。
寒くなり始めると身体の細胞の一
つ一つが縮んで弾力がなくなるた
めか、水分が溜められず体外に出
やすくなり、トイレが近くなります。
それによって不必要に身体が渇き、
冷えやすくなり、体内の水から老廃
物を濾しだす働きをつかさどる腎
臓に負担がかかりやすくなります。
この時期に身体に水分をつけるた
めには、冷たいものでなく暖かい
水分が有効です。
ただしカフェインの多い、珈琲、紅
茶、緑茶などは利尿作用でかえっ
て水を消費するので役にたちませ
ん。
牛乳やジュースなども水分の補給
にはなりません。
ほうじ茶や温かい麺、鍋物、味噌汁
などは有効で実際とても美味しく感
じます。
この時期のもう一つの大きなポイン
トは、迷走神経の緊張と咳の問題
です。
私なども咳が長く続くタイプで、ど
うしても気管に負担がかかります。
咳は一つには気管の中の余分な
ゴミを外へ出そうとする働きで決し
て邪魔なものではありません。
空気が乾燥し、気管の中の繊毛が
うまく働かなくなってくると、自動的
にはゴミを出せないので強制的に
外へだそうとしているのです。
しかし長く続くと気管が炎症を起こ
し、咳が止まらなくなり、体力を消
耗していきます。
気管の炎症には柑橘系のものが
有効です。
食道から気管に直接吸収するよう
な実感があります。
一時むせたりしますが、それも一
つの経過として積極的に利用して
下さい。
咳や喘息のもう一つのポイントは
迷走神経の緊張です。
陸上動物は魚類から進化する時、
肺の筋肉が足りずに顔の筋肉を
利用しているそうです。
横隔膜は元々は頬にあったものだ
そうで、その筋肉の神経は顔から
首を経て横隔膜に至っています。
神経が迷走しているのでその名が
ついています。
そのため寒くなると首が冷えるため
に過剰に迷走神経や呼吸器が緊
張し、それが咳や喘息という形で
あらわれます。
咳をするごとに少しづつ迷走神経
は緊張が休まります。
この咳も自然な働きですが、やは
り続けば体力は確実に落ちます。
迷走神経は眼の疲れや、頭の疲
れとも関係していますので、テレビ
やゲーム、パソコン、読書を控え、
静かに休む時間が必要になります。
身体の中では、骨盤の淵、鎖骨、
左腕、首などに有効な場所があり
ますが、何れも力は入れずに時間
も短く触ります。
お風呂に入って首までつかるのも
とても有効です。
咳にも暖かな水分をとって、首の
緊張が少しでも緩む体勢をとるこ
とが長い目から見て役にたちます。
秋は、夏の疲れがでて、渇きや冷
え、咳への対処も必要で、あまり
過ごしやすい季節とはいえません。
けれど暖かな飲み物やごく少量の
旬の幸には換えられない美味しさ
があります。
ひそやかで、ひめやかな楽しみが
秋にはよくあいます。

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