顔の写真

顔の写真
いつも持ち歩いているトートバッグに
はコンパクトサイズのデジカメが入っ
ている。
手ごろなサイズだけれど、露出やシ
ャッター速度の切り替えもでき、レン
ズもライカのもので一眼レフひけを
とらない写真を撮ることができる。
子どもたちが小さい時には真面目に
撮っては毎年アルバムを作っていた。
今メモリーカードに入っているのは、
雲と樹の写真がほとんどだ。
女性の写真はたぶん一枚もない。
少年時代から写真を撮るのが好きで
本を読んで写真の基礎を勉強したり
もした。
けれど何故か撮られるのは嫌いで、
カメラ目線など考えることもできない。
容姿に自信がないだけでなく、目立
ったり注目されるのが苦手なのだ。
だから自分が写った写真がほとんど
手元にない。
以前に雑誌の取材が来た時に、「最
期にお写真を」と言われて、写された
ことがあった。
その時「最初からこんないいお顔を
していただくことは(普通は)ありませ
ん」と言われた。
そうかなおかしいなと思ったら、手に
商品説明の時の酒瓶を持っていた。
私の好き嫌いの感性などこんな程度
のものかと自覚した。
ふだんはそれで何の問題もないのだ
けれど、少し前に参加している俳句
の結社で巻頭(一番)に選ばれ、7句
と写真の掲載という時は困った。
俳句は必死になって作ったけれど
出せる写真が見つからない。
仕方なく自撮りでこんなものかと提出
したが、俳句は概ね好評だったが
写真は散々で、ホームレスとか、人相
が最悪とか言われた。
そして今度、同人という責任のある
立場になり、10句と写真の提出という
ことになった。
前と同じものをだすことはできそうも
ない。
そこでお客さんで写真家もしている
る河野有砂さんに頼んで撮っていた
だくことにした。
私が使っているカメラとほぼ同時期
の似た構成のカメラを持参していた。
シャッター音を消す設定にしていて、
たくさん撮られていた。
後日忙しい中、選定と多少の校正を
した2枚の写真が送られてきた。
スナップ写真に近い自然な表情が
とらえられている。
普段鏡をほとんど見ない私には、この
写真が他人の目に写る自分の姿な
のかどうかはよく分からない。
けれど真正面からでなく、少し斜めの
アングルで撮られた写真には、古本
屋の店主のようにシャイだけれど永年
自分の世界で生きて、自ずから古び
ていく人間の顔がとらえられている。
今までホームページにも、この通信
にも自分の顔を載せたことはないの
だけれど、河野さんの写真の腕とセ
ンスを信じて、みなさんに見て楽しん
でいただければと掲載することにした。
俳句と同じで、余計なお世話には違
いないのだけれど。

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