俳句 令和4年の9月12日~9月18日

青葉木菟言葉は光文字は影

長息のスライドギター草の露

老バッハのかろきハミング花芒

時折音楽が現実に先行することがある。
東日本大震災の時は、2月位からモーツァルト
をまったく受け付けなくなった。
一年中いつ聴いても心に迫るモーツァルトだが
暖かくなってきて普通ならモーツァルトがぴっ
たりの春に聴けず、かわりにベートーベンの
後期の弦楽四重奏ばかり聴いていた。
そして震災の後もその状態は一年間は続いて
いた。
今年は一月位前から頭の中にずっとメロディー
がエンドレスに流れていた。
バッハだよな、えーとなんだっけ、そうだカン
タータだった、ええと140番だったかなと
予想して聞いてみるとまさにそれだった。
リヒターでもなく、昔好きだったガーディナー
でもなく、アーノンクールの旧盤だ。
女性でなく少年が高音部を歌う清楚で伸びやか
な演奏だ。
タイトルは「目覚めよと、呼ばわる物見らの声」。
タ、、タタ、タタという軽やかなリズムにのり、
やさしく誘うメロディーに心も身体もひらかれる。
実生活ではいろいろと大変だったバッハだが、
音楽の上では軽やかに飛翔する。
そして友人の死。
ああこれだったかと思いいたった。
それ以来毎日のように聴いている。
内なる少年を抱き続けた友人の真摯な姿勢と
シャイな視線がよみがえる。
バッハの軽やかな歩みとハミングとともに
天へと召されていった。

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