円山応挙の「保津川図」と絶筆の一句

円山応挙の「保津川図」と絶筆の一句
円山応挙は江戸時代中期の京都の
最も絵画が充実していた時期を代表
する絵師です。
その時代の京都には、伊藤若冲、与謝
蕪村、池大雅、長沢蘆雪、呉春などが
同時期に活躍し競っていました。
写実を重視しながらも創意と工夫に溢
れ、ファンタジー豊かな名作を産み、
現代まで続く円山派の祖となりました。
「保津川図」は八曲一双(八枚で構成
された屏風が左右一対になっている)
で、その内の右隻(右側)に保津川の
滝と激流を描いています。
この絵は応挙の絶筆(生涯最後の絵)と
して知られ、彼の画業の集大成です。
「見えない水が見える」と評されます。
この絵に出会ったのは偶然でした。
何気なく入った美術館で企画展があ
り、江戸時代の京の爛熟した絵画が
多数展示されていました。
その中の一枚の絵に吸い寄せられる
ように近づいていきます。
辺りは静寂につつまれ、自分の息の
音が大きく感じ、胸が高鳴ります。
単なる絵とは思えない生命観、躍動感
があり自分がその一部になったような
気がします。
そしていつの間にかザーッという水音
につつまれていました。
不思議だなと思い周囲を見渡しても
スピーカーや音響設備らしきものはあ
りません。
他にも呉春などの好きな絵師の絵が
あり楽しんでから戻ると、また水の音
が聞こえます。
何度も飽きずに行ったり来たりを繰り返
しました。
その感覚を俳句で表現しようと挑戦し
ましたが上手くいきません。
俳句を始めて8年たちましたが残念な
がら才能の無さと歳とっての覚えの悪
さを自覚します。
私が俳句に求めるのは自分らしい句、
自分で納得できる句を作ることです。
他からの評価を求めてはいません。
それでも今回少しは達成できたと感じ
る句ができました。
それはこの紙面を見ていただいている
みなさんのおかげと思います。
人目に晒すことで、緊張と集中を持続
することができました。
けれど仕事が忙しくこれ以上俳句にエ
ネルギーを使うことは困難であり、俳句
作りを終わりにすべきと決めました。
最後の句は最高の句ではありませんが、 
個性を刻んだ句であり、これが私の限 
界と思えます。
 
保津川図に水の声聞く夏雲雀   晴
みどり児の寝息鎮もる夏つばめ
雨の蟻琥珀に眠る夢を見て

春の繁殖期には空高く舞い上がり、命
をきらめかせているひばりですが、夏
には羽も生え変わり草地や藪を密かに
飛び回ります。
季節のうつろいと私自身の高齢化を
「夏雲雀」という季語に託しました。
ほとんど眠ることがないという蟻ですが、
ほんの少しじっと止まって睡眠をとるよ
うです。
雨の中たたずむ蟻は琥珀に閉じ込め
られる夢を見ているのか、それはもしか
したら私の夢なのかもしれません。
長い間お付き合いいただきありがとう
ございました。

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